大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和60年(行ウ)99号 判決

原告

矢野穗積

被告

東村山市長市川一男

右訴訟代理人弁護士

奥川貴弥

上條義昭

抜井光三

被告

小松恭子

右訴訟代理人弁護士

鈴木亜英

杉井静子

主文

原告の被告東村山市長に対する訴えを却下する。

原告の被告小松恭子に対する請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告東村山市長が昭和六〇年三月七日付けで被告小松恭子に対してした金五万円の補助金交付決定を取り消す。

2  被告小松恭子は、東村山市に対し、金五万円及びこれに対する昭和六〇年三月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  被告東村山市長

(本案前の答弁)

(一) 本件訴えを却下する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

(本案の答弁)

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

2  被告小松恭子

(本案前の答弁)

本件訴えを却下する。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、東村山市の住民である。

2  ドナルドグループは、法人格はないが代表、意思決定の方法等を定める規約を有している任意の青少年団体であり、被告小松恭子(以下「被告小松」という。)はその代表者である。

3  被告東村山市長(以下「被告市長」という。)は、昭和六〇年三月七日ドナルドグループに対して金五万円の補助金(以下、「本件補助金」という。)を交付する旨の決定(以下、「本件決定」という。)を行い、同月一八日本件補助金をドナルドグループに交付した。

4  しかしながら、本件決定は、次の理由により違法である。

(一) 東村山市補助金等の予算の執行に関する規則(昭和四五年九月一日規則第二九号、以下「本件規則」という。)五条二項、本件規則の施行規則たる「記入例」(交付申請書、昭和五九年度補助対象事業計画書及び添付書類1ないし3の趣旨及び記入方法を示した四枚一組の文書。以下「本件記入例」という。)及び「昭和五九年度東村山市社会教育関係団体のうち青少年団体に対する補助金交付要綱」(以下「本件要綱」という。)第五(2)、第七の2(6)によれば、同一年度内に一団体に対し一事業のみを補助対象とすることとされ、補助金交付申請書には昭和五九年度内の一事業を補助対象事業として特定し、記載した補助金対象事業計画書を添付することが要求されている。しかるに、被告市長は、ドナルドグループが一事業を補助対象事業として記載した補助金対象事業計画書を添付せず、昭和五九年度の全事業を対象として補助金の申請をしたにもかかわらず、被告小松との通謀に基づき、右申請を受理し、右申請に基づき昭和五九年度の全事業を基礎として補助金額を算出し、本件決定を行った。

したがって、本件決定は、本件規則五条二項、本件記入例及び本件要綱第五(2)、第七の2(6)に違反する違法なものである。

(二) 被告市長は、ドナルドグループと同様に同一年度内の全事業を補助対象事業として補助金の申請をしたもぐら子供会に対しては、同一年度内の一事業を補助対象事業とするように補正させたうえで申請を受理し、補助金の交付を行うなど、他の団体については、同一年度内の一事業のみを補助金の対象としていたのであるが、(一)で述べたとおり、ドナルドグループについては、被告小松との通謀に基づき、同一年度内の全事業を補助対象事業とする申請を受理し、本件決定を行った。

したがって、本件決定は、法の下の平等を定める憲法一四条に違反する違法なものである。

(三) 社会教育法一三条は、社会教育関係団体に対する補助金交付の必要的要件として社会教育委員の会議の意見を聞くことを義務づけているが、これは、社会教育法の立法時には社会教育関係団体に対する補助金交付を禁止していたのを、昭和三四年に同法を改正し、補助金交付を認めることとしたが、その際、憲法八九条との関係などから、補助金交付による弊害が生じないように配慮を加え、客観的批判に耐えうる補助金の支出方法を確保しようとしたものである。この立法趣旨によれば、地方公共団体の長は、社会教育委員に対して、補助金交付の手続、すなわち、交付申請の経過、交付額決定の根拠、方法等について、その事実を示す資料を配布し、これについて説明を行うことが、意見を聞くための要件とされるのは自明である。しかるに、被告市長は、昭和六〇年二月二〇日に開催された社会教育委員の会議で、昭和五九年度の青少年団体に対する補助金交付について意見を聞いたが、その席上に配布された資料にはドナルドグループの補助対象事業として「青少年育成」と表示されていただけで、それについての説明はなく、また、ドナルドグループに関する事実経過はもちろん、もぐら子供会が交付申請を補正したことについても公表されなかった。

したがって、被告市長は、社会教育委員の会議に事実を示す資料を配布し、これについて説明を行ったということはできないから、本件決定は、社会教育法一三条に違反する違法な処分である。

(四) 東村山市は、財政事情の悪化のため、昭和五八年度までは社会教育団体のうち成人団体、青少年団体の双方に補助金を交付していたのを改め、昭和五九年度からは青少年団体だけに支出することとし、交付額の算出方法も定式化し、交付申請の手続も公開するなど、補助金交付制度の整備を図ったのであるが、被告市長は、補助金を既得権とみなし、前年度並みの金額が助成されるとの考えを是認し、ドナルドグループに対する交付額を勝手に増額させた本件決定を行った。

したがって、本件決定は、地方自治法二条一三項及び地方財政法四条に違反する違法な処分である。

5  ドナルドグループは権利能力なき社団に当たらず、したがって、本件補助金はドナルドグループの代表者たる被告小松個人に交付されたものであるというべきところ、以上のとおり、本件決定は違法な処分であって取消しを免れないし、仮に、本件決定が贈与あるいは負担付贈与の承諾に当たるとしても、法令に違反しているので公序良俗違反ないし地方自治法二条一六項によって無効であるから、本件決定に基づいて交付された本件補助金五万円は法律上の原因を欠き、不当利得となる。

6  よって、原告は、被告市長に対して本件決定の取消しを、被告小松に対して東村山市に代位して金五万円及びこれに対する右金員が被告小松に交付された日の翌日である昭和六〇年三月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を東村山市に対して支払うよう求める。

二  本案前の主張

(被告市長)

本件要綱は、行政指導ないし行政指導のための統一的な基準であって、相手方に対し遵守の義務を課するものではなく、拘束力を有しないのであるから、本件要綱による本件決定は、私法上の贈与もしくは負担付贈与であって、地方自治法二四二条の二第一項二号の行政処分に当たらないから、本件訴えは不適法である。

(被告小松)

1 ドナルドグループは、代表、意思決定の方法等の規約を有する任意の青少年団体であるが、次に述べるところから明らかなように、権利能力なき社団であるということができる。

(一) ドナルドグループの構成員は、会員である子供、その父母及び子供の遊び相手ないし指導をするリーダーであり、その目的は、地域に根ざし、子供達にとって自然な喜びである「遊び」(集団あそび)を通して責任、義務、協力等社会的人間に成長するための諸資質を養うとともに、スポーツを含めた遊びにより強い身体づくりや積極性を育てるなど、創造性豊かで個性に富んだ意欲的な集団活動を父母やリーダー達と共に展開することである。

(二) ドナルドグループは、年一回毎年五月に開催される総会を最高の意思決定機関とし、その下に父母の代表(父母会長、同副会長、会計、グループ係)とリーダーで構成される運営委員会があり、ほぼ毎月一回開催され、日常的なグループの運営に当たっている。さらに、その下に父母会とリーダー会があるが、各係は、父母が担当し、各係の代表で構成される代表委員会も必要がある毎に開催される。グループの代表者は毎年運営委員会で推薦し、総会で選任されるが、留任を妨げる規約もないので、創立以来被告小松が選任されている。

(三) ドナルドグループは、会員から受領する入会金、運営費等によって運営されており、毎年予算をたて会計係が予算を執行し、決算報告もなされている。繰越金、入会金、運営費等の収入は、三栄信用組合久米川支店の「ドナルドグループ代表小松恭子」名義の普通預金口座に積み立てられ、支出がある場合はそこから引き出される。また、グループに帰属している財産としては、別紙物件目録記載の物があるが、これらの財産管理は備品係が行っており、物置の鍵は右係の責任者が保管し、原則的にはこの責任者を通じて備品の出入れ、貸出しが行われている。

2 本件補助金は、権利能力なき社団であるドナルドグループに対して交付されたものであって、被告小松個人に交付されたものではないから、被告小松には被告適格がない。

三  請求原因に対する認否

(被告市長)

請求原因1ないし3の事実は認める。

同4(一)のうち、本件要綱によれば同一年度内に一団体に対し一事業のみを補助対象とすることとされていたこと及び被告市長が、ドナルドグループが昭和五九年度の全事業を対象として補助金の申請をしたにもかかわらず、右申請を受理し、右申請に基づき昭和五九年度の全事業を基礎として補助金額を算出し、本件決定を行ったことは認めるが、被告市長と被告小松が通謀をしたことは否認し、その余は争う。ドナルドグループは、補助金対象事業計画書を含め補助金交付申請に必要な書類はすべて提出していた。

同4(二)のうち、被告市長がドナルドグループと同様に同一年度内の全事業を補助対象事業として補助金の申請をしたもぐら子供会に対しては、同一年度内の一事業を補助対象事業とするよう補正させたうえで申請を受理し、補助金の交付を行ったこと、他の団体については、同一年度内の一事業のみを補助の対象としていたこと及びドナルドグループについては同一年度内の全事業を補助対象事業とする申請を受理し本件決定を行ったことは認めるが、被告市長が被告小松と通謀したことは否認し、この余は争う。

同4(三)のうち、昭和六〇年二月二〇日に開催された社会教育委員の会議の席上に配布された資料にドナルドグループの補助対象事業として「青少年育成」と表示されていたことは認めるが、その余は争う。被告市長は、右会議に資料を提出したが、この資料提出行為自体が説明にあたるし、もし疑問があるならば委員が質問をすればよいのである。また、補助金交付決定は、被告市長の裁量行為であるから、仮に社会教育委員の意見を聞く義務に違反したとしても、交付決定の効力には影響を与えない。

同4(四)のうち、東村山市が昭和五八年度までは社会教育団体のうち成人団体、青少年団体の双方に補助金を交付していたのを改め、昭和五九年度からは青少年団体だけに支出することとしたことは認めるが、その余は争う。

同5は争う。

(被告小松)

請求原因1ないし3の事実は認める。

同4(一)のうち、ドナルドグループが昭和五九年度の全事業を対象として補助金の申請をしたことは認めるが、本件要綱が同一年度内に一団体に対し一事業のみを補助対象としたこと及び被告市長と被告小松が通謀したことは否認し、その余は争う。補助対象は、同一年度内に一団体に対し一事業のみを対象とする事業経費に限られず、団体の性格・事業等の特殊性により、必要と認められる場合は運営費についてもその一部を補助することができるとの補助の特例がある。

同4(二)のうち、被告市長がドナルドグループについては同一年度内の全事業を補助対象とする申請を受理し本件決定を行ったことは認めるが、被告市長が同一年度内の全事業を補助対象事業として申請したもぐら子供会に対しては同一年度内の一事業を補助対象とするよう補正させたうえで申請を受理し補助金の交付を行ったことは知らず、その余は争う。

同4(三)のうち、被告市長が昭和六〇年二月二〇日に開催された社会教育委員の会議で昭和五九年度の青少年団体に対する補助金交付について意見を聞いたことは知らず、その余は争う。

同4(四)は争う。

同5のうち、ドナルドグループが権利能力なき社団に当たらないこと及び本件補助金が被告小松個人に交付されたことは否認し、その余は争う。本案前の主張で述べたとおり、ドナルドグループは権利能力なき社団に当たる。

四  本案の主張

(被告市長)

1 本件決定の経緯は、次のとおりである。

(一) 東村山市では、昭和五八年度までは社会教育団体に対し、当該年度内の総事業を対象とし、過去の実績等を考慮して補助金を交付していたが、昭和六〇年一月一八日本件要綱を決定し、その第五で補助の対象とする事業の範囲は、団体の普及向上並びに東村山市の学校教育以外の教育、学術及び文化の向上に寄与するものであり、概ね次に掲げる事業及び経費とする旨定められた。

(1) 当該団体の事業で主として学習・文化・リクリエーション活動等の事業

例:講演会・講習会・発表会・展示会・大会・野外活動及びこれらに類する事業

(2) 第五(1)の規定により実施する事業のうち、同一年度内に一団体に対し一事業のみを対象とする。

(3) 補助の対象とする事業経費

報償費・・謝礼金又報償金等

消耗品費・・短期間の使用により消耗される物品を購入する経費

印刷製本費・・写真代・コピー代の経費(電話を除く)

通信運搬費・・連絡等に要する郵送料

使用料及び賃借料・・会場借料並びに備品等の賃借料

右の趣旨は、一事業を基準に補助金を算定するものであるが、それはあくまでも一基準であって、その他の事業を無視して補助金を算定するということではない。

そして、東村山市は昭和六〇年一月二〇日付け東村山市報四九六号において右補助金支出の旨を公表し、同月二一日から二八日にかけて補助金の申請用紙を交付したが、その際市職員が昭和五九年度補助金交付の内容を説明した。

(二) 本件要綱に基づく補助金の積算基準は次のとおりである。

(1) 事業費割

一事業の対象経費の合計額を参加人員で割り、一人当たりの経費を予め五区分された基準にあてはめて算出する。

(2) 個人負担割

事業に要した全経費を参加した人数で割り、一人当たりの負担金に従って予め五区分された基準にあてはめて算出する。

(3) 調整割

当該団体の会費の一か月の金額に従って予め一五に区分された基準にあてはめて算出する。

(4) 調整

前年度の補助金交付実績を考慮して調整する。

(三) ドナルドグループも右申請用紙の交付を受けたが、その後被告小松らと東村山市教育委員会次長中村政夫、同委員会社会教育課長小泉征也、同課社会教育係長小町勝美(以下「小町勝美」という。)らとの話合いのなかで、被告小松らから、補助金の要綱を急に変え、一事業を補助の対象とされたのでは困るとの要望が出され、右中村らは本件要綱に従って申請するよう説得したものの、結局被告小松らの要望をのみ、ドナルドグループについては全事業を補助対象とする申請を受け付け、本件決定を行った。

2 本件決定は、次のとおり適法である。

(一) 本件決定は本件要綱に違反しているが、要綱は通達と同じく上級行政機関から下級行政機関に発せられる命令であるから、要綱に反したからといって直ちにそれが違法となるわけではなく、それが法令に適合している限り適法、有効である。

(二) 被告市長は、本件要綱の決定、補助金の交付が年度末に遅延したことから、各団体が前年度補助額を基準に補助金が交付されるものと見込んで年間予算計画をたてていた実情を考慮して、各団体に対する昭和五九年度補助金交付決定においては、前記積算基準に従い最終的には前年度の交付実績によって修正した。その結果、殆どの団体に対する補助金交付額は、前年度と同額になったのであり、ドナルドグループに対しても調整の結果、前年度と同額の五万円になった。したがって、被告市長がドナルドグループを恣意によって優遇したということはできず、本件決定は平等原則に反するものではない。

(被告小松)

1 本件補助金は、ドナルドグループから①昭和五九年度の計画事業はほぼすんでおり、この段階で一事業に特定することは無理である、②補助金交付時期が年度末であって、ドナルドグループの場合各事業についての会計処理はすんでいることの二点の申入れを受けた市側が、ドナルドグループの実情を認めたうえで、「団体の性格・事業等の特殊性により、必要と認められる場合は運営費についてもその一部を補助することができる。」との本件要綱第六を適用して交付したものである。したがって、本件補助金の交付は本件要綱に違反しない。

2 仮に、本件補助金の交付が本件要綱に違反していたとしても、直ちにそれが違法となるわけではないところ、ドナルドグループは新しく提出を義務付けられた「補助対象事業計画書」に一事業を特定した記載をしなかったにすぎないこと、全事業を対象とした場合と一事業を対象とした場合とで補助金の額に差異がないこと、調整加算の結果前年度より補助金の額が減額された団体がないこと、ドナルドグループの会員数(補助金の交付を受けた団体の中で最多)、活動実績、前年度の交付実績(五万円)からいえば、ドナルドグループが五万円の本件補助金の交付を受けることにはなんらの違法性もない。

五  被告らの本案前の主張に対する認否及び反論

(被告市長の主張に対する認否及び反論)

被告市長の本案前の主張は争う。

本件決定が負担付贈与契約の申込みに対する承諾という非権力行政の性質を有しているとしても、ある行為の本質が権力関係であるか非権力関係であるかは当該行為の処分性の有無についての判断基準とは必ずしもならないところ、本件決定は、本件要綱ではなく、社会教育法一三条及び本件規則という法令に基づいてなされた形式的行政処分であって処分性を有する。

(被告小松の主張に対する認否及び反論)

被告小松の本案前の主張は争う。

六  本案の主張に対する認否及び反論(被告市長の主張に対する認否及び反論)

被告市長の主張1(一)のうち、昭和六〇年一月一八日本件要綱が決定され、その第五で補助の対象とする事業の範囲は、団体の普及向上並びに東村山市の学校教育以外の教育、学術及び文化の向上に寄与するものであり、概ね当該団体の事業で主として学習・文化・リクリエーション活動等の事業(例・・講演会・講習会・発表会・展示会・大会・野外活動及びこれらに類する事業)で、実施する事業のうち、同一年度内に一団体に対し一事業のみを対象とし、補助の対象とする事業経費は、報償費(謝礼金又報償金等)、消耗品費(短期間の使用により消耗される物品を購入する経費)、印刷製本費(写真代・コピー代等の経費。ただし電話を除く。)、通信運搬費(連絡等に要する郵送料)、使用料及び賃借料(会場借料並びに備品等の賃借料)とする旨定められたこと及び東村山市は昭和六〇年一月二〇日付け東村山市報四九六号において右補助金支出の旨を公表し、同月二一日から二八日にかけて補助金の申請用紙を交付したが、その際職員が昭和五九年度補助金交付の内容を説明したことは認めるが、その余は争う。

同1(二)及び(三)の事実は認める。

同2(一)は争う。本件要綱は、本件規則が規定する法制度を完成させる目的で、本件規則が定める添付すべき関係書類等申請の手続き、要件を定めているから、本件規則の実質上の施行規則で本件規則と一体をなすものである。したがって、本件要綱に違反すれば当然に不適法となる。

同2(二)は争う。

(被告小松の主張に対する認否及び反論)

被告小松の主張1のうち、本件要綱第六が団体の性格・事業等の特殊性により、必要と認められる場合は運営費についてもその一部を補助することができる旨規定していることは認めるが、その余は争う。被告市長は一年度内、一事業の事業費を基礎とする補助金積算基準しかもたなかったのであるから、本件決定が本件要綱第六に基づいてなされたものでないことは明白である。また、本件要綱第六は一年度内、一事業の事業費について補助金の交付額を決定した後、必要と認めうる場合に限って右補助対象事業費以外の運営費についてその一部を補助対象としうるというのがその趣旨であるから、補助金全額を右要綱第六により交付することは予定されていない。さらに、ドナルドグループについては、運営費の補助が必要とされる特殊性もなかった。

同2は争う。ドナルドグループが昭和五九年度に実施した事業で参加者一人当たりの事業費の最も多いものを選択し、その一事業を補助対象事業として補助金の額を積算すると、別紙のとおりその額は二万六五〇〇円となるのであって、全事業を補助対象事業とした場合(その額は、別紙試算表のとおり三万三五〇〇円になる。)に比べて七〇〇〇円少なくなる。

第三 証拠〈省略〉

理由

一請求原因1ないし3の事実については、当事者間に争いがない。

二そこで、本件訴えの適否について検討する。

1  まず、被告市長は、本件決定は地方自治法二四二条の二第一項二号の行政処分に当たらないから、本件決定の取消しを求める被告市長に対する訴えは不適法である旨を主張するので、この点について検討する。

地方自治体が私人に対して補助金を交付する関係は、地方自治体がその優越的地位に基づき公権力を発動して私人の権利、自由を制限し、これに義務を課するものではなく、本来、資金の交付を受けたいという私人の申込みに対する承諾という性質を有する非権力的なものであるから、その関係においては、原則として、地方自治法二四二条の二第一項二号に規定する行政処分は存在しないものというべきであり、ただ、法令等が一定の政策目的のために、一定の者に補助金の交付を受ける権利を与えるとともに、補助金の交付申請及びこれに対する交付決定という手続により行政庁に申請人の権利の存否を判断させることとした場合、あるいは、一定の者に補助金の交付を受ける権利を与える旨の規定が法令等に存在しなくても、法令等が補助金の交付申請に対して行政庁が交付決定をするという手続を定め、右決定に対する不服申立手続を設けているような場合など、法令等が特に補助金の交付決定に処分性を与えたものと認められる場合には、右交付決定は地方自治法二四二条の二第一項二号に規定する行政処分に当たるものというべきである。そして、いわゆる法治主義の原則の要請するところにより、右の法令等とは形式的意味の法律のみならず、条例等法律に準ずるものとされているものを含むが、行政庁が自らの内部規則として定めた規則及びいわゆる要綱等は、それが法律ないし条例等の委任を受けたものでない限り、これを含まないものと解するのが相当である。

右の見地に基づいて本件をみるに、〈証拠〉によれば、本件決定は本件規則及び本件要綱に基づいてされたものと認められるところ、〈証拠〉によれば、本件規則は、補助金等の交付の申請、決定その他補助金等にかかる予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等に係る予算の執行の適正化を図ることを目的とする(一条)ものであって、補助金等の交付申請の手続(五条)、これに対する交付決定の手続(六条ないし八条)を規定するとともに、本件規則の施行について必要な事項は市長が別に定める旨(二二条)を規定しているが、いかなる場合に補助金を交付するかを定めた規定及び補助金の交付決定に対する不服申立てについての規定はないこと、本件要綱は、昭和五九年度東村山市社会教育関係団体に対する補助金交付要綱に基づき青少年団体に対する補助金の交付について必要な事項を定めることを目的とし(第一)、補助の対象となる事業及び経費の範囲(第五)、補助金の交付申請の手続(第七)、これに対する補助金の決定の手続(第八)を規定していること、本件決定の通知書には不服申立てについての教示がないことが認められるのであって、右認定の事実によれば、本件規則は補助金等の交付に関する手続が適正に行われるように事務執行上の内部手続を定めた内部規則にすぎないものというべきであり、また、本件要綱はいかなる場合に補助金を交付するかを定めるとともに、本件規則を受けて補助金交付の内部的手続の細則を定めたにすぎないものというべきであるから、本件規則及び本件要綱により本件決定に処分性が付与されるものではないと解するのが相当である。

なお、原告は、本件決定は社会教育法一三条に基づくものであるから行政処分である旨を主張するが、同条は国又は地方公共団体が社会教育団体に対し補助金を交付しようとする場合には、あらかじめ国にあっては審議会の、地方公共団体にあっては社会教育委員の会議の意見を聴いて行わなければならない旨を規定しているものにすぎず、同条によっては本件決定に行政処分性が付与されないことは明らかである。

したがって、原告の被告市長に対する請求は、地方自治法二四二条の二第一項二号所定の行政処分に当たらないものの取消しを求めるものであって、不適法であるといわざるを得ない。

2  次に、被告小松は、本件補助金は権利能力なき社団であるドナルドグループに交付されたものであって、被告小松に交付されたものではないから、被告小松には不当利得返還請求について被告適格がない旨を主張するので、この点について検討する。

法人格を有しない団体が社団たる実質を有し、いわゆる権利能力なき社団として、その財産上の権利義務が総有的に構成員に帰属するためには、当該団体が、団体としての組織をそなえ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、組織における代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確立していることが必要であると解される。これを本件についてみるに、ドナルドグループが、法人格はないが代表、意思決定の方法等を定める規約を有している任意の青少年団体であり、被告小松がその代表者であることは、前記のとおり当事者間に争いがなく、右争いのない事実に〈証拠〉を合わせると、ドナルドグループは、昭和三八年一〇月、被告小松によって設立された子供会であって、被告小松、メンバーである小学生、中学生、父母会会員、メンバーの世話をし、活動を指導するリーダー会会員で構成されており、機関として、総会、運営委員会、父母会、リーダー会がおかれていること、総会は最高意思決定機関であって、被告小松、全父母会会員、全リーダー会会員を構成員とし、年一回、毎年五月に開催されること、運営委員会は、被告小松、父母会三役(会長、副会長、会計)、リーダー会の代表者を構成員とし、日常的な意思決定を行う機関で、年数回開催されており、父母会、リーダー会は総会、運営委員会の意思決定に従ってドナルドグループを運営していること、役員としては、対外的にドナルドグループを代表する代表者、父母会三役、リーダー会チーフ、各係の代表者などがあり、総会で選出されるが、被告小松はドナルドグループの発足以来代表者をしていること、ドナルドグループでは、その目的、活動内容、組織、役割分担等を記載した「ドナルドごあんない」というガリ版刷りのパンフレットを、毎年若干の改定を加えて、新入会員に配布していること、ドナルドグループは主にメンバーから徴収する会費、補助金で運営され、父母会会計がその管理を行っており、毎年九月に中間会計監査が行われ、総会で決算報告、予算の承認が行われること、備品、消耗品等の購入、スポーツ安全協会傷害保険及びボランティア保険への加入はドナルドグループの名で行われており、領収書もドナルドグループ、ドナルドあるいはドナルド子供会宛に発行されていること、購入された備品等はドナルドグループ専用のプレハブ倉庫に保管されていること、ドナルドグループの現金の出入れのため、三栄信用組合に「ドナルドグループ小松恭子」名義で預金口座が開設されているが、その通帳、印鑑は父母会会計が保管しており、被告小松の個人用には使われていないこと、以上の事実を認めることができるが、しかしながら、他方、前掲松村範子の証言によれば、規約は書面としては存在しないことが認められるのみならず、総会、運営委員会の決議方法、父母会及びリーダー会への入会資格、入会方法についての規約の存在、父母会会員及びリーダー会会員を確定する方法についてこれを認めるに足りる証拠はなく(成立に争いのない乙第二号証の三によれば、昭和五九年度の大人の会員は三一名、子供の会員は一四六名であったことが認められるから、メンバーである子供の父母全員が父母会の会員になっているとは認められない。)、したがって、ドナルドグループは設立以来これまで、団体の運営をほぼ円滑に行ってきたと認められるものの、その構成員の範囲が必ずしも明確であるということができず、総会の運営や財産の管理等団体としての主要な点が確立しているとはいまだ認められないものというべきであるから、ドナルドグループが社団たる実質を有していると認めることはできないものといわざるを得ない。そして、以上の判示の事情から考えると、ドナルドグループは被告小松が個人として主宰するものというべきであるから、本件補助金は被告小松個人に交付されたものと認めるのが相当である。

したがって、被告小松の主張は採用することはできない。

三本件決定が被告小松との関係で違法であるか否か検討する。

1  まず、原告は、本件決定は本件規則五条二項、本件規則の施行細則たる本件記入例及び本件要綱第五(2)、第七の2(6)に違反する違法なものである旨を主張するので、この点について検討する。

〈証拠〉に弁論の全趣旨を合わせると、本件規則五条一項は補助金等の申請をしようとする者は別記様式第一号の申請書を市長に対して提出すべき旨を、同条二項は前項の申請書には同項所定の書類を添付すべき旨を、同条三項は市長が特に必要がないと認めるときは申請書もしくは添付書類に記載すべき事項の一部または添付書類を省略することができる旨をそれぞれ規定していること、本件要綱第五(2)は第五(1)の規定により実施する事業のうち同一年度内に一団体に対し一事業のみを対象とする旨を、第七の1は補助金の交付を受けようとする団体は別紙様式一の交付申請書に必要な書類を添付して市長に提出すべき旨を、同2は本件規則五条三項の規定を受けて、事業計画書(年間)、補助金対象事業計画書等の所定の書類を添付すべき旨をそれぞれ規定していること、交付申請書に添付すべき昭和五九年度補助金対象事業計画書の用紙には補助対象事業の事業費の金額は昭和五九年度事業計画書の一事業のそれと一致すべき旨が注記されていることが認められるところ、ドナルドグループが昭和五九年度の全事業を対象として補助金の申請をしたことは、当事者間に争いがなく、右争いのない事実に前掲乙第二号証の三、成立に争いのない乙第二号証の一及び四ないし七、査定欄については証人小町勝美の証言により真正に成立したものと認められ、その余の部分については成立に争いのない乙第二号証の二、証人小町勝美及び同松村範子の各証言並びに被告小松恭子本人尋問の結果を合わせると、ドナルドグループと市側との話合いの結果、市側はドナルドグループについては昭和五九年度の全事業を補助の対象として記載された書類の添付された申請書を受理したこと、ドナルドグループは必要とされる書類は全て添付して申請書を提出したが、その際、昭和五九年度補助対象事業計画書の事業名の欄は空白にしたままであったこと、小町勝美は、被告小松と相談したうえドナルドグループの補助対象事業名を青少年育成としたことが認められるから、ドナルドグループのした補助金の交付申請及びこれを受けてなされた本件決定は本件要綱第五(2)、第七の2の規定に違反しているということができるが、しかしながら、前記のとおり、本件規則五条三項によれば、被告市長は、同条二項所定の書類が欠けていても、特に必要がないと認めるときは、申請を受理することができるのであり、後記認定のとおり、昭和五九年度から補助の対象を一事業に変更し、それに伴い申請書の様式が変更になったことに対し、市長に苦情が相当数寄せられ、また、被告小松から一事業を対象として補助金の申請をするのは困難である旨の申入れ等があり、市の担当者は、本件要綱第六の規定の適用も考えて、全事業を補助金の対象とするドナルドグループの申請書を受理したことが認められ、右認定事実によれば被告市長は、特に必要がないと認めて、ドナルドグループの全事業を補助の対象として記載した申請書を受理したものであるということができるから、結局、本件決定が本件規則五条二項に違反するということはできない。

なお、被告小松は、本件決定は本件要綱第六の団体の性格・事業等の特殊性により、必要と認められる場合は運営費についてもその一部を補助することができるとの補助の特例を適用してされたものである旨を主張するところ、本件要綱第六が被告小松主張のとおり規定していることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない丙第二号証によれば、昭和六〇年九月に開催された東村山市議会において、教育長、教育次長が被告小松の主張に沿う答弁をしていることが認められるが、前判示のとおり、ドナルドグループは昭和五九年度の全事業を対象として補助金の申請をしたのであり、〈証拠〉によれば、被告市長は右申請に基づき、全事業を対象として補助金額を決め、本件決定をしたことが認められるから、本件決定は全事業の事業費に対する補助としてされたというべきであって、被告小松の右主張を採用することはできない。

右のとおり、本件決定は本件要綱に違反するものであるが、要綱は、行政当局が行政の指針として制定する内部規則であって、それ自体法規としての性質をもつものではないから、本件決定が本件要綱に違反するからといって直ちに違法となるものではないと解すべきところ、本件決定が違法となる事情については何らの主張、立証もない。かえって、後記2に判示するとおり、ドナルドグループが全事業を補助対象としたことにも一応の理由があるということができるし、本件要綱どおり一事業で申請したとしても補助金の額に差異はなかったと認められることに照らすと、本件決定は本件要綱に違反するからといって違法になるものではないというべきである。

なお、原告は、本件記入例も本件規則の施行細則たる性質をもっている旨を主張するが、〈証拠〉によれば、本件記入例は本件要綱によって申請書に添付することとされた書類の記載方法を説明したものにすぎないと認められるから、本件記入例が独立して本件規則の施行細則になるものではないというべきであって、原告の右主張は失当である。

したがって、結局、本件決定が本件規則、本件記入例及び本件要綱に違反するから違法である旨の原告の主張は、採用することができない。

2  次に、原告は、本件決定は平等原則に違反する旨を主張するので、この点について検討する。

ドナルドグループが昭和五九年度の全事業を対象として補助金の申請をしたことは、前記のとおり当事者間に争いがなく、右争いのない事実に〈証拠〉並びに弁論の全趣旨を合わせると、以下の事実を認めることができる。

(一)  社会教育団体に対する補助について、東村山市では昭和五八年度までは青少年団体のみならず、成人団体も補助対象団体とし、その年度の全事業を補助の対象としていたが、昭和五九年度は市の財政事情等から青少年団体のみを補助対象団体とし、さらに、従来、事業費補助か、運営費補助か明確でないとの指摘がなされていたので、この点も改め、原則として一事業を対象として補助金を交付することとし、昭和五九年一二月の社会教育委員の会議で承認を得て、本件要綱を決定し、昭和六〇年一月二〇日付けの市報で青少年団体へ活動費を補助する旨が公表された。

(二)  東村山市の職員は、補助金交付申請書を交付するに当たって、一事業を補助の対象とすることとなった旨及び申請書の様式が変更になったことを口頭で説明したが、申請しようとする団体からは、前年度と補助の体系を変えるのであれば何故年度当初に説明がなされなかったのか等の苦情が相当数寄せられた。

(三)  ドナルドグループでは、年間を通じて日常的に活動をしているため、事業を区切ることが難しいし、仮に一事業を対象として補助金の申請をするとすれば最大の行事であるサマーキャンプを対象とすることとなるが、サマーキャンプについては独立した会計処理を行い、これについて会計監査も受けているが、サマーキャンプを行うためにその年の五月頃からリーダーの研修、現地下見、備品、消耗品の購入等の準備を始め、その費用は一般の会計から支出されるため、サマーキャンプに要する全経費を算出することは困難であった。そこで、被告小松は殆どの事業は終了しているのにこれから事業計画書を作成するのはおかしいし、右の事情からドナルドグループでは一つの事業に絞って申請することは困難である旨を小町勝美に対して申し入れた。

(四)  東村山地域の子供会の連絡会である東村山地域子供組織連絡会(以下「地子連」という。)の代表である秋山仁美のもとに今年度の補助金はどうなっているのだという声が寄せられたため、同年二月五日、地子連と市との交渉が行われたが、その際、ドナルドグループの父母会長松村範子も同席し、前記の事情を説明したところ、市側は本件要綱に沿って一事業で申請するように述べていたが、結局、本件要綱第六の団体の性格・事業等の特殊性により、必要と認められる場合は運営費についてもその一部を補助することができるとの規定の適用も考え、全事業を補助対象とする申請書を受理することとなった。

(五)  補助金の交付申請をした一八団体のうちドナルドグループを除く一七団体は、いずれも一事業を補助の対象とした補助金交付申請書を提出した。このうちもぐら子供会は、全事業を補助の対象として申請したが、小町勝美から一事業を対象とするよう指導を受けたため、右指導に従って申請書を提出し直した。

(六)  東村山市では補助金の交付申請の受付が終了したあと、事業費、当該事業における個人負担額、会費額によって補助金の金額を算出する補助金積算基準を一応作成したが、各団体は前年度並みの補助金を予定していると考えられたことから、前年度の金額を下回らない金額を交付することとし、右基準によって算出された金額に修正を加えて事務局案を作成し、資料(甲第四号証の一ないし三)と共に右事務局案を社会教育委員の会議に提案し、委員から質問のあった事項については、必要な答弁をしたうえでその承認を得たので、被告市長は右事務局案通り補助金を交付する旨の決定をした。なお、右修正が加えられたため、補助金の交付を受けた一八団体のうち前年度より増額になった団体が七団体(内二団体は前年度は補助金の交付を受けていない。)でドナルドグループを含む残りの一一団体は前年度と同額となった。

以上の事実を認めることができ、証人小町勝美及び同小泉征也の各証言中、右認定に反する部分は採用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、他の一七団体と異なり、ドナルドグループについては、昭和五九年度の全事業を対象とする申請を受け付け、これに基づいて本件決定がされたのであるから、申請の段階ではドナルドグループだけを優遇したということができないではないが、しかしながら、ドナルドグループが全事業を補助の対象としたことにも一応の理由があるということができるものであり、また、補助金の額は前年度の実績を考慮して決定されたため、各団体とも前年度と同額ないしはそれ以上の金額の補助を受けたというのであるから、仮にドナルドグループが一事業を補助の対象としたとしても、補助金の額は本件決定と同額になったと推認することができる(〈証拠〉によれば、ドナルドグループが昭和五九年度に実施した事業のうち、参加者一人当たりの事業費の最も多い高学年キャンプを補助対象事業とし、右キャンプのために独立して会計処理された事業費に限定して、補助金積算基準により補助金額を試算すると、事業費割、個人負担割の金額の合計は、別紙試算表のとおり、二万六五〇〇円となり、全事業を補助対象事業とした場合の金額に比して七〇〇〇円少なくなることが認められるが、前記認定のとおり、右キャンプにはその他にも経費がかかっていることが認められるから、右の金額は正確であるということはできない。)のであり、これらを総合して勘案すれば、本件決定が平等原則に違反し、違法であるということはできないものというべきである。

したがって、原告の主張は採用することができない。

3  さらに、原告は社会教育委員の会議の席上に配布された資料にはドナルドグループの補助対象事業として「青少年育成」と表示されていただけで、それについての説明はなく、また、ドナルドグループに関する事実経過はもちろん、もぐら子供会が交付申請を補正したことについても公表されなかったから、事実を示す資料を配布し、これについて説明を行ったということはできず、本件決定は社会教育法一三条に違反する旨を主張するが、前記認定のとおり、東村山市では資料(甲第四号証の一ないし三)と共に事務局案を社会教育委員の会議に提案し、委員から質問のあった事項については、必要な答弁をしたうえでその承認を得たのであり、また、右資料によれば、補助金交付の基本的事項である補助金を交付する団体、補助対象事業、補助金の額、その算出根拠等が判明するのであるから、委員から質問がない限り、それ以上の説明をする必要はないというべきであって、原告の右主張は失当である。

4  最後に、原告は、本件決定は、被告市長が補助金を既得権とみなし、前年度並みの金額が助成されるとの考えを是認し、ドナルドグループに対する交付額を勝手に増額させたものであるから、地方自治法二条一三項及び地方財政法四条に違反する旨を主張するが、本件決定に至る経過は前記2に認定したとおりであって、右事実によれば、前年度と同額もしくはそれ以上の金額を補助することとなったのは、本件要綱の作成が年度末になったことによるものであるというべきであるから、被告市長がドナルドグループに対する交付額を勝手に増額させたものであるということはできない。

したがって、原告の右主張は、前提を欠き、失当といわざるを得ない。

5  以上のとおりであって、本件決定が違法であるとの原告の主張は、いずれも採用することができず、原告の被告小松に対する請求は理由がない。

三よって、原告の被告市長に対する訴えは、不適法であるから、これを却下し、被告小松に対する請求は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官宍戸達德 裁判官北澤晶 裁判官生野考司)

別紙〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例